レーダー衛星画像の AI による自動解析

これまでの衛星データの解析は、主に人間の眼によって行われてきました。しかし近年になって超小型衛星を活用した100機以上の衛星コンステレーション(星座の意。複数の衛星による観測網)が実現し、1 日に獲得される衛星データは人間が全て解析することが出来ない量になっています。
そのため、AIを活用し、全てのデータを解析することで、様々な人間活動による地球表面の変化を自動的に解析する技術が求められています。地理情報科学研究チームでは、これまでに地上に存在する物体の自動識別プログラムを光学衛星画像や航空写真に適用し、メガソーラー津波で流失した建造物 を対象にした自動検知ができることを示してきました。しかしながら、地球のおよそ75%は天候不良や夜間のため光学衛星では観測することが出来ません。合成開口レーダー(以下「SAR」という)であれば、光学衛星でカバーできなかった領域・時間帯を網羅することができますが、電波で見た地球の様子は人間が眼で見るものとは異なるため、教師データセットの作成が困難です。そこで地理情報科学研究チームでは、経済産業省の委託により、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構が開発したオイルスリックマッピングシステムPaGOSSに基づき、海面のオイルスリック(油膜)の教師データセットを整備しました。この教師データセット(下図中央)と深層学習技術を活用することで、SAR 衛星画像から海面のオイルスリック(油膜)を自動検出することが可能となりました。

レーダー衛星画像AI自動解析システム.jpg


地球観測衛星「だいち」に搭載された SAR センサの画像(左) とオイルスリックの自動抽出結果(右)

この技術は、将来的に船舶事故や不法投棄による油のモニタリング、海底油田探査等に応用することができます。また海面のみならず陸上を観測したデータに応用することにより、 様々な地表面の変化を気象状況や時間などに左右されず、継続的かつ自動で検出することも可能になります。本研究に用いられた教師データセットはNEDO受託事業「次世代人工 知能・ロボット中核技術開発」の成果として近く公開する予定です。


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